アメリカに来る前にアメリカの文化のことについての文献をいくつか読みましたが、どの本にも自己主張が大切と書いてありました。アメリカ人は思ったことをストレートに言うし、日本人のようにオブラートにつつむことはない、とか、自己主張しないと負けたも同然、などなど。小学生の頃はクラスで一言も口を開かなかったような私なので(後々、はじけはしたけれど)、それはそれは恐怖でした。

実際アメリカで大学を卒業してアメリカ人たちと米企業で仕事をしてみると、必ずしも私の理解が正しくなかったことに気づきました。確かにアメリカ人は自己主張しますが、それを何も考えずに言いたいことを言ってるのかというと、またそれは別問題。逆に日本人のほうが正直に物事を伝えるのでは、と思うこともしばしばです。この辺のアメリカ人のやり方を理解していないと、外資系企業などで働く際に大変苦労します。本日はその自己主張についてのお話です。

Constructive Feedback – アメリカ人は否定的なことをどう伝えるか?

 

私が日本でOLをしていた頃、いつも部下を大声で叱責しているヤクザ課長(見た目はスネオだったけど)がいました。私が所属していた課の隣の課での日常だったのですが、隣に座っているわけだからとんだ営業妨害、騒音被害!「お前はどうしていつもこうなんだ?」「お前アホ以下だな!」とか、怒りが頂点に達したときなんか「お前と家族の人生めちゃめちゃにしてやることだってできるんだからな」と脅迫まがいのことまで言っていました。まぁ、ここまでひどい上司は日本でも特別だったのでしょうが、同じことをアメリカで言ったら翌日に訴えられますよ。アメリカ人は絶対にこんなこと言いません。

アメリカ人が改善すべき点を部下に伝えるときは、まさにサンドイッチ戦法を使います。「あなたの勤務態度はすばらしいわ!誰よりも先にきて誰よりも遅く帰る!なかなかできることじゃないわ!心から感謝します。」とまず褒める。そして「アドバイスがあるとすれば、次回の査定までにコミュニケーション上達のためのクラスを取るといいわ。私も以前取ったことがあるんだけど、そのあと別人のように話せるようになったの。」とポジティブ感ぶっこみつつ問題点を指摘します。そして「あなたの働きにとても満足しているわ。これからもいい仕事を期待しているわよ!」と笑顔で終了。でもこの会話での上司のポイントはたったひとつ。コミュニケーション力をつけないと、次回の査定に響きます、ということ。日本人の私たちには分かりにくくないですか?

日本だと上司は違う風に部下に問題点を伝えると思います。「お前のためを思って言っている」と部下を飲みにでも連れ出した席で、真摯に改善点を伝えるのではないでしょうか。部下は家族同然に扱う社風が残っている会社も多いでしょうから、本音で向き合えば伝わる、と本音の会話がアメリカ人同士よりも行われます。

アメリカは世界各国からの移民で構成された国なので、お互いの仕事の仕方に敬意を払う意味でも、日本人同士のように本音は言いません。アメリカ人はおしゃべりなので、自己主張をしているように見えて、実際は言う人も言い方もよーく吟味しています。だからこそ否定的なことを伝えるのに、Constructive Feedbackと言って、部下のためになるような改善点をうまい言い方で伝えなければならないのです。

アメリカ人上司は神様

 

こちらに企業では、HRはアドミ的な役割を果たしがちで、実際に誰を雇うか、誰を昇進させるか、誰をレイオフするか、は上司の肩にかかってきます。逆の言い方をすれば、上司は神様。とは言いすぎですが、そのくらいの権限を持っています。だからこそ上司との関係は、私たち仕事人の社内での将来を左右すると言っても過言ではありません。

アメリカ人は自己主張ばかりしている、と日本人は思いがちですが、実際上司と話すときは相当気をつけています。意見を言いたいときもそれを時と場所を選ぶし、言う際にも「あなたの考えに付け加えるとすれば」と始めて、まったく別の自分の意見をぶっこんだりします。これから出世するであろう上司にくっついて、うまく意見を合わせながらやっていくのが、こちらのやり方です。

Choose your battles – 自己主張する価値ある?

 

 外資系 上司

こちらでは、自己主張する前に、その価値があるかどうかを考えことが大切です。Choose your battlesは直訳で「戦いを選べ」ですが、要は「それは自己主張して、多少の犠牲を払ってまで、手に入れようとする価値はあるか」という意味。仕事をしているとどうしても譲れない部分も、気にはなるけど別に関係を悪化させたり、自分に対する見方が変わる危険を冒してまでも、欲しいものではないってこともありますよね。

たとえば私の場合は、公務員という職業柄、意志決定に無駄に時間がかかる職場にいます。そのことに対して最初は意見を述べていたのですが、もう何十年もそのやり方なわけですから、変化には時間がかかるというよりも、変わること自体無理なのでは、という結論に達しました。だからその件について意見を言うのはきっぱりと止め、その代わりに自分の評価に影響が直接出るような事項にだけ意見をするようにしました。それは私が自己主張しない日本人だから、というステレオタイプな理由ではなくて、私がその戦の価値を見極めて放棄したから。

アメリカ人上司とうまくやる方法

そんな方法があったら私も知りたいですが、一番大切なのは意見の言い方だと思います。上で書いたサンドイッチ戦法のように、否定的なこともオブラートにつつんで(サンドイッチにはさんで?)伝えたり、上司の意見を否定せずに付け加えるという形でしっかり自分の意見を述べるやり方などは効果的です。反対意見を述べるときは「あなたの言いたいポイントはよく分かるわ」「あなたの意見に感謝します」とワンクッションおいてから、自分の意見を述べたりするのもいいですね。

私の友人(アメリカ人白人男性)は「アジア人はforward(直接的、オブラートにつつまず物事を言う)だから、一緒にミーティングに参加してるとハラハラするよ。語学の問題なんだろうけど。」とこぼします。意外だと思いませんか?そのくらいアメリカ人は戦略的に自分の意見を相手に伝える方法を身につけていて、移民や外国人の私たちは少ない語彙を駆使して何でもかんでもはっきり言ってしまうのでしょうね。英語ができる=日常会話が成り立つ、と考えがちですが、実際はもっと奥が深くて、アメリカ人同様に職場でうまく自己主張していくやり方を身に着けるのには長い道のりなのです。私自身もまだその長い道のりをゆっくりと歩いております。

こう書くと実はアメリカ人は本当の自己主張はしていないんじゃないか、という気になりますね。でもする場面もあるのです。次回はそのお話です。

 

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