今回読んだのはDisrupted。スタートアップの会社で働いた50代の元Newsweekのジャーナリストのさまざまな体験談が書かれたものです。Disruptedとは中断されたとか崩壊したという意味。筆者がスタートアップの若い企業で、若い社員(上司は20代!)と肩を並べて働き、年齢差別を受けながら22ヶ月を過ごした話はなかなか壮絶、そして現代社会のダークな部分を浮き彫りにしました。これは将来を見据える社会人のためのよい心の準備になるのではないでしょうか。

52歳にしてNewsweekを解雇された筆者は、HubspotというマーケティングのためのSaaS(サース、Software as a Service)を提供するスタートアップの会社に転職を果たします。ところが初日から驚きの連続。誰も筆者の役割を分かっていないし、ビールが飲み放題のキッチンはあるし、何よりも大学生インターンみたいな風貌で社内を案内してくれた20代の若者が上司!彼の苦悩の日々が始まります。

 

スタートアップ企業は大学卒業してすぐに入社するような若者が多く採用します。筆者いわく、それは彼らは安価で雇えるし、企業の文化にもすぐに順応できるから。そんな若者たちの常識が会社の常識なので、大学のフラタニティみたいな感覚の社風になりがち。フラタニティとは大学にある社交クラブみたいなもので、イメージ的にはクラスの中心になるような目立つ存在の白人の男女でなる団体。HubspotにもFearless Fridayと言って金曜日に仕事以外のことをして賑やかに交流を深めたり、ハロウィンには本気の仮装パーティーがおこなわれます。

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社員の出入りも激しく、いわば使い捨て状態。若い社員たちがビールを飲みながら、環境の悪い部屋でテレマーケティングの仕事をしている様子が書かれています。筆者もその部屋にほうりこまれるのがおそろしい。日本のように窓際族にしてほしいところですよね。

 

日本でも年齢によって要職から外されたり、早期退職をうながされたりする話は聞きますが、アメリカでもそれは存在します。日本と異なるのは、雇用にて、年齢による差別は法律で禁止されているので、それがわかりづらい形でなされること。履歴書に年齢を書く欄はありませんし、人事部やマネージメント間でも、年齢によって職種やお給料がわかるようなデータは、強いビジネス上の理由があり、更には多くの承認を得ないと手に入りません。そのデータを元に、年齢による差別の裁判を起こされることが頻繁なアメリカでは、マネージメントは常に気をつけていないといけないのです。

 

就職の面接においても、さきほども述べたように履歴書に年齢は記さないし(経歴からなんとなくは分かるのですがね)、面接で年齢を聞かれることもありません。私は一度、アメリカの日本人留学生向けのイベントで、大手の日系企業の面接を受けたことがあるのですが、そこで一番最初に年齢を聞かれて驚いたことを覚えています。それ思いっきり違法ですから!それでも面接は進み、最後に面接官が提案したことは今でも忘れられません。「あなたの戦力とコミュニケーション能力はわが社に大変有益なので、ぜひ次の面接に進んでいただきたいのだけど、年齢がネックです。次の重役面接では、なんとかとりつくろって、どうしてあなたが22歳(大学卒業するべき年齢)でなくて26歳なのか、その空白の4年間をうまく説明してもらえませんか?」と(笑)。とりつくろうって!空白って!たった4年、されど4年ですね。

年齢差別 アメリカ

 

私自身はアメリカの企業でこのようなあからさまな差別発言は聞いたことがないのですが、この本の筆者は「年寄りなのに、アドバイスもできないって、つかえないじゃない!」とか「年寄りは仕事ができない」のような発言を、普通に面と向かってされたと書いています。筆者が特に問題視したのが、その発言をするべきでないことに、若い社員たちは気づいていないこと。「君たち、年寄りって単語を、『黒人』とか『女性』に置き換えてごらん。差別だと思わないかい?」と聞くと、「でも誰も黒人とも女性とも言ってないじゃないか」と返されたそう。つまり人種差別や性差別は大きな問題だと認識していても、年齢差別に関しては考えたこともないようです。だからこそ問題解決には時間がかかりそうですね。

 

この本の筆者、最後には納得行かない形でその会社を去り、今はやりがいのある仕事をしているようでよかった。スタートアップ企業にとっては40を超えた私も立派な年寄り。今後の身の振り方をしっかり考えていかないといけません。

 

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