日本で最後に働いたのは16年前(!)のことなので、その頃は製造が中国などで行われることはあっても、開発が国外で行われることはありませんでした。アメリカでは私が働き始めた2002年には既にオフショア開発は活発化していて、ごく当たり前の仕事環境でした。私の会社はインドへのアウトソースが主でしたが、他は中国、フィリピン、東ヨーロッパなどでオフショア開発する類似企業も多かったです。

 

オフショア開発とは、情報システムやソフトウェアの開発業務を海外の事業者や海外子会社に委託・発注すること。人件費の安い新興国の企業や人材を活用して開発コストを削減するのが目的で、多くの企業が活用しているシステムです。政府系の仕事をしているならともかく、企業のIT開発で全く開発をアウトソースしないのは、逆に珍しいパターンじゃないか、と言うほど、ごく当たり前の状況です。

 

私自身もオフショアの社員と仕事をした経験が多くあります。会社側がコスト削減したい強い動機は分かりますが、個人的にはあまり良い思い出がありません。今日はそんなオフショア開発のあるあるをご紹介します。

 

 

オフショアにマネージメントは期待できない

 

私が一緒に仕事をするオフショアはインドのみでしたが、彼らはコードを書いたりする知識に関してはなかなかの腕前。アメリカでは大企業しか購入できないようなバカ高いツールは実際その企業に入社しないと触れることもできない場合が多いのですが、インドでは普通に街中で手に入ってしまうそう。リーガルなライセンスではないのかもしれませんが、インドでは多くの学生がそのようなツールを自由自在に使い倒し、卒業する頃にはプロ並みになっているので、知識はなかなかのものなのです。

 

ただマネージメントに関しては話は別。アメリカのクライアントとのやりとりは彼らには商習慣や言語の違いから難しいので、マネージメントはアメリカで行われます。開発に関しては9割くらいがオフショアにて行われ、マネージメントはほぼアメリカに残るんじゃないかな。

 

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責任を取らないインド人のマネージメント

 

前述の通り、マネージメントはアメリカで行うことがほとんどですが、オフショア側にも開発をマネージするマネージャーはいます。アメリカ側の希望としては、開発に関しては完全にオフショア側にマネージして欲しいところですが、そうはいかないのがオフショア開発。「今週中に開発を終わらせる予定だったけど、何人も辞めちゃったから無理〜、ごめ〜ん!」みたいなメールが普通に入ってきます。全然マネージャーの意味ないじゃん!その難しい中でいかに損害を少なくするか考えるのがマネージメントですし、だいたい社員がまとめて辞めてしまうような状況までほっといてしまうのも問題。

 

良い人材確保もオフショア側のマネージメントには任せられません。優れたプログラマーはすぐに条件の良い他の企業に引き抜かれるし、それを止めようともしないのです。いきなり「サガー君は今日付けでやめることになった」とかメールが来るもんだからびっくりしますよ。事前に知っていたら、彼レベルの人材には、給料アップを提示したのに。

 

オフショア開発をする=何もかもマネージする勢いで臨まないと、失敗に終わるのが知られざる現実です。

 

文化の違いは思うより深刻

 

新興国スタッフの人件費は先進国の数分の一程度のことが多く、うまく行けば大幅なコスト削減が可能です。私が長くマネージしていたオフショア開発では、私たちアメリカのスタッフが1時間200ドルほどクライアントに請求する中、インド人スタッフは20ドルほどしか請求しません。クライアントが飛びつくのも無理はありません。

 

オフショア開発

 

ただ言葉や商習慣の違いから意思疎通のコストが嵩んでコストメリットを打ち消してしまったり、品質や契約などをめぐる認識の相違からトラブルになることも、当たり前のようにあります。例えばインド人の場合、相手を見てコミュニケーションの仕方を決める部分があるので要注意。私みたいな甲高い声の女子が、アクセントたっぷりに人の良さそうな口調であれこれ言えば、「こいつは丸め込める」と全然言うことを聞いてくれなかったことも多々ありました。だから基本的にインド人と話すときはしっかりと強い口調で、私がマネージする側、彼らは言われた通り開発する側、と言う縮図をきちんと示さないといけません。彼らはmindsetもwork ethic(労働観)も異なりますから、それを理解した上で接さないと、後でこちらが痛い目に遭うのです。

 

遠距離恋愛以上に、遠距離マネージメントは困難

 

同じオフィスをシェアしないということは、彼らが毎日何をしているのか分からないということですから、同じオフィスにいる場合とは異なるマネージメントが求められます。彼らは忙しいふりをするのが上手ですから、自分だったらどのくらいかかるかを計算してそれを伝えないといけません。いくら電話越しで愛をささやかれても、遠距離の彼は浮気しているかもしれないでしょ?

 

私はインドのオフショアチームと毎朝ステータスミーティングを電話で行っていましたが、毎朝ステータスを聞くたびに「開発は問題なく順調に進んでいます」という言葉しか聞けませんでした。一番最初のプロジェクトではそれを鵜呑みにしてしまい、最後にひどいどんでん返しがあり、アメリカ側で私の評価が地に落ちたことがありました(涙)。それからは実際に彼らが書いたプログラムを提示させて、細かくチェックします。というか、しているふりをして、脅しをかけます。

 

プロジェクトにはFixed Price Contract(プロジェクトのためにまとまったお金を一度でもらうスタイル)と、Time & Material Contract(時給でクライアントに請求するもの)があります。Fixed Price Contractだと金銭面の責任はすべてこちら側にかかってきますから、オフショア開発をする際は要注意です。オフショア側とは生産効率を共有する仕組みを作ることが、成功への秘訣です。

 

クオリティーに期待は禁物

 

前述のように責任の所在をアメリカ側に押しつけるのが常ですから、クオリティーは予想通りです。「きっと誰かがしっかりテストしてくれる」、「問題があったらちゃちゃっと直せばいい」、という態度が見え見え。しかも締め切りに対する危機感も薄いですから、決められた時間通りに終わらないこともよくあります。

 

私の同僚のプロジェクトで、アメリカ側の技術リーダー2人と、インド側に5人がいる開発案件がありました。2ヶ月間かけて5人が開発したプログラムはめちゃくちゃで、問題点だらけ。結局アメリカ側のリーダー2人が2日徹夜をして、すべてのプログラムを書き直したことがありました。だからこそ、先ほど述べた通り、逐次作業の進度を確認し、どのようなデザイン&コードなのか、どこがテストされたのかを把握していないと、必ず失敗します。

 

このようなアウトソースにおける問題点は、私の会社だけでなく、多くの会社に共通するようで、企業によってはオフショア開発を取りやめて、国内でサービスのみならず、製造まで行うところも出てきました。日系や他の外資系の自動車産業でも、アメリカで製造を行うのが半分以上だと聞きました。先ほど述べたようなクオリティーの問題ももちろんですが、人材コストも特にオフショア開発で人気のあるインドなどでは高騰してしまい、さほどコスト削減にならなくなったことにも関係しています。

 

どこかの大統領候補のような口ぶりにはなりたくありませんが、やはり自国の競争力を維持するためには、自国の人材を育てることが大切。私ももうオフショアのマネージメントはこりごり!

 

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